ガーバーのナイフをもう1本。
ナイフというと「人を傷つけるもの」というイメージがどうしてもある。それも仕方がないので、むやみに人前に出して持ち歩くものではない。日本で市民が手に入れることができるナイフは武器ではなく道具であり、決して人を傷つける目的で使ってはならない。
といっても、いざというときに武器に流用できることもナイフの魅力と言えなくもない。だからと護身用に持ち歩くことは禁止されているし、ナイフの武器としての使い方を考えるのであれば、それをいかに「使わないようにするか」を同時に考えるべきだと思う。
ここで紹介するのは、ヒンダラーCLSというやや大型のフォールディングナイフ。ブレードは90mmもあり、グリップは大人の手でもしっかり握ることができる。
そして、「CLS」、Combat Life Saverという名前が示す通り、命を救うためのナイフという異色のコンセプトで作られている。
「ヒンダラー」とはデザイナーのリック・ヒンダラーの名前で、ガーバー社では「ハーシー・エア」や「フリーマン・ハンター」などいくつかデザイナーの名前を冠したシリーズがある。名前が出ていなくても、デザイナーが明らかになっていることが多い。例えばLMF2はフリーマン氏であり、LSTはブラッキー・コリンズ氏とされる。
そして、CLSの前にヒンダラー・レスキューというナイフが販売されていた。これは真っ赤なグリップが特徴で、消防士が使うためのレスキュー用途に徹したナイフ。ブレードは先端が丸めてあり刺さらないようになっている。刃はフルセレーションでロープや布を切り裂く用途に使う。ブレードにはシートベルトカッターや酸素ボンベオープナーがある。
自分は消防士ではないので使う見込みはまずないが、それでもあまりにかっこいいので結構欲しいと思った。
同じように考える人が多かったのか、ガーバー社ではヒンダラー・レスキューのハンドルを流用して、ハーフセレーションのドロップポイントのブレードを装着した通常のナイフを発売した。それがこのCLSである。
レスキュー用途ではないにしても、「命を救う」というコンセプトは継承している。といってもハンドルは黒になり、ブレードも黒く塗装されている。戦場で太陽光を反射して敵に見つかるのを避けるためであろう。
ブレードのロックはライナーロックで、ハンドルの内側に金属のフレームがある。ブレードの厚みは3mmほど。フラットグラインドになっていて、鋼材は440A。
ガーバー社の新しいロゴがプリントされている。ライナーロックではあるがロックの解除はヒンジ横のボタンをスライドさせて行う。AR3.00と同様にヒンジ部にスペーサーが挟まれていて動きは適度な摩擦がある。
反対面にパテントの番号がある。AR3.00と同様にブレードの背面に親指を受ける部位がある。
大型のサムスタッドがあって手袋をしていても開閉可能。
ハンドルの尾端にシートベルトカッターが収納されている。ここはヒンダラー・レスキューと同じ。
展開するとこう。ただ、軽合金のダイキャストなので本当にシートベルトが切れるかは分からない。
ハンドルの反対側には溝があって、これは酸素ボンベオープナーとなっている。また、尾端はソングホールの他に尖った突起があり、車の窓ガラスをこれで叩き割ることができる。消防士用ではないが、持っていれば自分が生き延びたり、誰かの救助ができるというコンセプト。
畳めば12cm、5インチほどの大きさに。
Lサイズのナイフケースにちょうどいい大きさ。ケースを使わなくてもベルトクリップで携帯できる。
値段は1万円前後で、製造国はどこかが謎だったが、箱に台湾製と書かれていた。
山でも登るなら使う機会はあるだろうと買ってみたが、まだ使う機会もなく、箱出しの切れ味も試してはいない。なんとなくよく切れそうな気はする。