アダム・グラント氏が提唱する「ギバー」、「テイカー」の理論は、本はまだ読んでいないのだけど、伝え聞く内容からはとても興味深いと思う。
概要は下記のリンク先などに出ている。
ギバーというのは何かと与えたがる人で、相手が喜んでくれるのが嬉しくてどんどん奉仕するような人。
テイカーというのは収益重視の人で、自分が何を得られるのかを第一に考える人。
ざっと言えばこんな感じ。中間に収支バランス重視のマッチャーというのもあるという。
人の性質は状況によって大きく変わるので、いつでもどこでもギバーだけな人、テイカーだけな人というのはまずいなくて、状況によりそれぞれを切り替えていると思うが、それでも、人付き合いの中ではこの人はギバー気質、この人はテイカー気質というのは見えてくる。
クリエイターについても同様で、プロアマ問わず、SNSでイラストや漫画をバンバン描いて公開する人がいる。こういう人はギバー気質と言える。
テイカー気質のクリエイターというと、私が見てきた中では、小説書きで賞への応募や持ち込みがメイン、作品を公開するのは落選したとき、という人がいる。こういう人は活動の目的が入賞や商業誌への掲載であり、結果称賛や収入が得られることを目的としているように見える。こういうスタイルはテイカー気質かなと思う。
プロが作品を小出しして「あとは買ってね♡」というのは出版社との関係もあるので、簡単にギバーかテイカーかは言えない。
もし同じようなものを得ている絵師がいたとして、一方がギバー気質、一方がテイカー気質だとすると、得られるものが同じなら、作る作品は下の図のような違いが生じる。
ギバー気質の人は、作品ができたらすぐ人に見せたくなり、評価や収入は二の次でバンバン投稿する。二の次なので収入の割に作品は多くなる。
テイカー気質の場合は、収入が得られるギリギリの制作で済ませようとする。リターンが同じなら投資は最低限の方が経済合理性がある。
結果、ギブする作品の量はギバー気質の方が多くなりがちである。
ここで、創作で積み上げた経験の違いが生じる。ギバー気質であれば経験値が高い。作品の露出も多くなるから、それが評価や収入につながるというスタイルになっていく。
テイカー気質で最低限の創作しかしないと、経験が不足しがちになるということは言えると思う。そうすると、思ったほど評価や収入が得られないという事態は起き得る。すると、ギブも縮小する方向になり、いずれ創作をやめてしまったり、細々とたまに作品を作るだけ、というようなことになってしまう。
これを図にしたのが以下だ。
クリエイターはギバー気質の方が断然得だと思う。
ギバー気質だと何がいいかを箇条書きしよう。
- 作品を作ること、公開することそのものが楽しい
- その上、評価や収入があると嬉しい
- 評価や収入が得られなくても、作品を作って公開することの楽しさが報酬なので、心理的な採算は既にとれている
- 作品が多くの人の目に入るので、思わぬところで評価や収入につながることがある
- 作品を制作する量が多いので経験が積め、成長の機会が多い
人は、誰かを喜ばせると自分も嬉しい、という性質があって、それが世の中をうまく回していく原動力になっている。ギバーとは、この性質に素直な人と言える。
この件、さいとうなおき氏も動画で「絵は見てくれる人へのプレゼント」というようなことを話していた。今回どの話かを探してみたが、見つからなかった。参考になる動画ばかりなので、片端から見ていけば見つかると思う。